スキーパトロール養成講習検定会
本年は日本スキー発祥50年を迎えた記念すべき年であります。この50年の今日、スキーヤーの激増は周知の如く、スキー人口は世界一の日本といってもいいと思うが、残念なことにはこれにともなってスキー傷害の数も累増している。この防止と手当はスキー界の急務といわれ、昨年の代表委員会においても各地代表委員の諸氏も強調されているのであります。
しかるにこの傷害防止、スキー場の整備などに直接関与されるべきスキーパトロールの訓練は未だに何ら手が打たれていないので、今回各方面の絶大なる協力によって、全日本スキー連盟は第1回の公認スキーパトロール講習検定会を去る1961(昭和36)年4月28日より30日まで、万座温泉にて開催したのであります。誡に「遅きに失す」といっても過言ではないので、当然このようなスキー人口の膨張する以前に行われるべきであった。しかしながら遅ればせながら地元各位のご厚意によりまた厚生省、自衛隊の後援で開催されたことは関係者の一人として喜びにたえないところであります。
今回の講習会は受講生23名に対して講師団としては,木原会長初め約20名という画期的なぜいたくなものであり、これだけにスキー連盟としての熱の入れ方は大変なものであった。将来各地のスキーパトロールの中心となっていただく方々にお集まりいただいたわけであります。従来我国のスキーパトロールは各地元においてそれぞれの特異性を生かしてやっておられた状態ですが、次第に国際的になって行く日本スキー界の現状ではパトロールの方も横のつながりを持って、パトロールの全国委員会を開き外国と交流をしなければ時代から取りのこされてしまうのであります。
すなわちスキーパトロールの国際的組合の大会に参加できないのであります。外国ではこのパトロール協会がオリンピックのような大きな競技会には大変大きな役割を果しているのであります。
今度の催しについては米国の協会では大変な朋待をもっているのであります。こんな点から考えても、スキー人口世界一の日本でこの催しがやっとできたのは、前にも申上げたように「遅すぎた」のであります。講習会は、9時より午後5時まで実技の演習、夜は7時より11時半まで学科が行なわれた。(齋藤英)
講習会および検定会内容
木原会長挨拶(別紙巻頭言による)
①講義
- スキーパトロールの概論斎 齋藤英
- 競技スキー、欧米各地のスキーパトロールについて 堀浩
- 冬の気象,天気予報の一般知識,天気図の書き方読み方 奥山巌
- スキーの傷害の実態およびその予防対策 矢橋健一,黒木良克
- 負傷者の救急法 羽生輿正
- 人口呼吸法 奥田千秋
②実科(雪上にて)
- 患者の発見、連絡、輸送 羽生輿正
- スノーボートの操作方法 堀川小隊長以下隊員11名
- スノーホールの作り方 大江幸雄
- ザイルの結び方 福島功手
③検定
▼実科検定
- スノーボートの操作方法 スキーをつけた場合とつけない場合
- 患者発見救急処置
- 包帯法
▼学科検定
- パトロールの役目について考えている事を記せ
- 応急手当の三段階
- 副子固定に際し注意すべき事項
- 呼吸は三つの要素から成っている。これは何か
- 人工呼吸の種類を3種あげよ
- スキー場において見られる呼吸停止の主な原因をあげよ
- 次の語につき知る所を記せ(この内二つ)
a 寒冷前線 b 西高東低型 c 気圧の谷
④懇談会
結局この検定会において17名の全日本スキー連盟公認パトロールが誕生したわけです。この17名の方々に対しては心よりおめでとうといいたい、と同時に、我がスキー界のパトロールの良き指導者になられることを切望いたすものであります。
最後ですが、この講習検定会に絶大なる御援助いただいた地元国土計画株式会社、また高田より遠路おいで願った自衛隊の諸氏に対し衷心よりお礼申上げます。
参加講師団および受講生名簿
○講師
- 全日本スキー連盟会長 木原均
- 全日本スキー連盟常任理事 傷害防止対策常任委員 鈴木正彦,斎藤英,堀浩,大神田軍司
- 傷害防止対策常任委員 慈恵医大・矢橋健一,昭和医大・黒木良克,自衛隊衛生官二佐・羽生興正
- 自衛隊高田部隊 堀川小隊長,以下隊員11名
- 気象庁 奥山巌
- 自衛隊中央病院 奥田千秋
- 芝浦工大山岳部監督 大江幸雄,福島助手
○受講生
- 北海道 ◎青山正男,◎岩崎亨,◎米村貢
- 群馬県 ◎富岡駒治,◎久蔵正
- 長野県 ◎高橋政蔵,◎久保田佳年,◎山本一雄,丸山尚之,細野茂,◎笹川正道,見谷昌禧,丸山反近,丸山徹
- 鳥取県 ◎松田信
- 青森県 ◎新宅清作,◎神祐慈
- 栃木県 ◎齋藤敏雄
- 岩手県 ◎瀬川佳男,◎山洞義孝
- 山形県 ◎岡崎茂
- 新潟県 ◎片山秀男,秋山智昭
合計23名(◎印検定合格者 合計17名)